エコバトンVol.02 『野菜が発する力に全身を傾ける』

TAROさん(西加辰郎さん)

大学を卒業後、いくつかの企業勤務を経て仙台へ。2007年4月から、宮城県産の無農薬野菜を仙台市および周辺市町村に宅配する「TAROやおや」を運営している。「TAROやおや」は、無添加食品・無農薬野菜の流通を軸に、有機的に人とつながることを目標としているとのこと。開業する際には、無農薬野菜に関する理論を独学で勉強し、知り合いの少ない仙台で文字通り手探りの状態からお客さまと無農薬生産農家さんを探されたそうだ。現在も、野菜の鮮度をできる限り落とさないために、収穫当日の配達に全力を尽くし、あわせて、農家の方から教えてもらう「野菜をおいしく食べるためのレシピ」を野菜に添えて届けている。

■TAROやおや

 第2回目の「エコバトン」にご登場いただくのは、無農薬野菜の配達をされているTAROさんこと西加辰郎さん。

 TAROさんは、仙台を中心に地元で栽培された無農薬の野菜をお客様のもとへ配達されている。宮城県内にある数少ない無農薬栽培農家と年間契約を結び、「生産者の手からお客様の手へ」直接野菜を届けるために日夜奮闘されている。今回TAROさんに同行し、実際に野菜を栽培している畑をご案内いただいた。

野菜を栽培している畑

 秋保にあるTAROさんが契約されている農家の畑を見学させていただくため、仙台の街中から車に揺られること約30分。あたりを見回すと、小高い山に囲まれた「山里」が広がりはじめた。その風景はどことなく懐かしさを感じさせ、心が少しずつ解放されていくような感じがした。さらに車は進み、前日に降った雪が周囲の山肌をうっすらと白く覆い始めた。その山のふもとに目的地となる畑はあった。

 畑に足を踏み入れると、黒い土にしっかりと根を張ったキャベツがすぐに目に飛び込んできた。キャベツをよく見てみると、その葉はもちろんのこと、葉を這うように流れて行くしずくでさえも、自然の恵みから受けたものをこちらに伝えようとしているように思えた。

黒い土にしっかりと根を張ったキャベツ

 「野菜が発する力を感じられたかな?」
TAROさんはこう語りかけてくれた。

 「野菜には力がある」。言葉で伝えることは難しいが、野菜は確実に何らかの力を持っているように思えた。そして、畑をさらに奥へ進むにつれて「野菜が発する力」に圧倒されそうになった。この野菜たちや大地と向き合うためには、並大抵の覚悟では跳ね返されてしまうのではないだろうか。お話を伺っていると、「野菜が発する力」に全身を傾けることにより、TAROさんはこれらの野菜をありのままの姿でお客様のもとへ届けることができるのではないかと思うに至った。

 今回の同行で、最も印象に残っているのは、TAROさんが農家のみなさんから愛されていると感じたことだ。両者の間に交わされる言葉が多いわけではないが、農家とTAROさんとの間に濃密な空気が流れているように感じた。この濃密な空気は、長い間にわたりTAROさんが築き上げてきた信頼関係から生み出されたものなのだろう。

 後日TAROさんのWebサイトを訪問すると、「畑の思いを抱えて伝える」と記されてあった。

 あの日秋保の里をともに歩いたTAROさんが、今日も車の中に積み込まれた「畑の思い」を仙台のどこかのご家庭へと伝えていることを思い浮かべずにはいられなかった。

 野菜たちと向き合う覚悟ができたら、もう一度あの畑を訪れたい。今はそう思っている。

 

バックナンバー
エコバトンVol.03 『本物の森〜いのちの森〜を創る』
エコバトンVol.02 『野菜が発する力に全身を傾ける』
エコバトンVol.01 『できることから始める循環型ライフスタイル』