エコバトンVol.01 『できることから始める循環型ライフスタイル』

グラフィックデザイナー 田内 亜紀子さん

東京での6年間のデザイン会社勤務、フリーランスデザイン活動を経て、持続可能なライフスタイルを学ぶためニュージーランドへ渡る。レインボーバレーファームを初めとしたオーガニックファームで1年間パーマカルチャー、ガーデニングを学ぶ。2007年に帰国後、仙台を拠点にフリーランスでグラフィックデザイン活動を開始。その他に、せんだい・みやぎNPOセンターでデザイン、広報の仕事を中心にNPOを支援する仕事もしている。

■kico design
www.kicodesign.com

ニュージーランド北島にある「Rainbow Valley Farm」。常に世界中から様々な人々がパーマカルチャーを学びにここに来ている。

 記念すべき第1回目の「エコバトン」。トップバッターを飾っていただくのは、現在フリーランスで仙台を中心に活躍されているグラフィックデザイナーの田内亜紀子さん。高校まで仙台で暮らし、大学は東京で美術を学んだ。その後就職した広告制作会社では、たびたび終電に揺られ、ときには徹夜をすることも。いったい何のために自分が仕事をしているのか、わからなくなりつつあった。そんなときにたまたま友達に誘われて行った富士登山をきっかけにして、自然に対する興味がわいてきたそうだ。

 「富士登山以来、週末になると、友達と長野や東京近郊の山へ 通ってました。とにかく自然に触れることが気持ち良くて、すっかり魅了されてしまったんですね。あぁ、まだ日本にはこんなに美しい自然があるんだなって、山に行って初めて気づいたんです。そして、10年後、20年後もずっとこのきれいな景色を見ていたい、という単純な気持ちから、「環境」のコトが気になりだしました。調べてみたらやっぱり多くの問題が複雑に絡み合っていることが分かって、じゃぁどうしようか、と考えたときに、すぐはじめられることっていうと、やっぱり自分の生活を変えることからなんじゃないかなと思ったんです。そこから持続可能なライフスタイルに興味を持ち始めました。」

 6年間勤めた会社を辞めて、フリーで1年間働いた後、循環型のライフスタイルをより深く実践してみたいという思いでニュージーランドへ渡ることとなる。彼女がニュージーランドに興味をもったきっかけのひとつが『パーマカルチャー』という考え方だった。パーマカルチャーとはパーマネント(永続的)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)の3つの意味を持つ造語で、自然にも人にも負荷をかけずに精神的にも豊かな、持続可能な生活を送るためのデザインの手法であり、オーストラリアの生物学者、ビルモリソンが構築したものだ。自然や人をいたわりながら、大地からの恵みを皆で分かち合う、こういった思想が根底に流れており、その流れはオセアニア、ヨーロッパ、アメリカ、もちろん日本でも広がりを見せている。そして、この『パーマカルチャー』を学べる著名なファームがニュージーランドにあったことが、田内さんをそこへ向かわせる決め手となった。

 「パーマカルチャーファームに滞在してみて、最初に感じたのがファームそのものの外見的な美しさはもちろんですが実際に滞在してみると、何も無駄がなく、尚かつ人にとっての心地よさを追求した生活のシステムデザインの美しさでした。ある意味、とても先進的なライフスタイルだと思いました。食べ物がどこから来てどこへ行くのか、そしてその循環のサイクルの中に自分がいることを身を持って実感できたことが一番大きい経験でした。向こうではガーデニングを中心にやっていましたが、自分がデザイナーだということを話すと意外に重宝がられて、パーマカルチャーの教育用のイラスト、オーガニックチョコレートのパッケージ、ポスター、名刺、ロゴなどいろいろなデザインの仕事もやりました」

 そんな1年間のニュージーランド生活を経て、2007年7月に仙台に帰ってきた。こちらでも持続可能な生活に向けてできるところからやっているそう。 「ちょっとずつでも何かをやってみると、だんだんできる範囲が広がって行くと思うんです。始めたころは無農薬の野菜をたまに買うとか調味料だけ自然のものをそろえるとか、その程度でした。そこから徐々に洗剤は生分解性の高いものに切り替えたり、化粧水もオーガニックのものを使ったりと、なるべく自然と自分のカラダに負荷のかからないものを選ぶようになっていきました。日本に帰ってきてからは、自宅から出る生ゴミを肥料に変えて使うことを始めました。」

 これからは自分が持っている経験とスキルを、仙台の環境、文化、そしてみんなが幸せでいられるような社会のために使いたいという田内さん。仙台がエコの分野で先進都市になればうれしいとも語ってくれた。そして、お話を伺う中で一貫して伝わってきたのは『できることから始めてみる』ということだった。

 

バックナンバー
エコバトンVol.03 『本物の森〜いのちの森〜を創る』
エコバトンVol.02 『野菜が発する力に全身を傾ける』
エコバトンVol.01 『できることから始める循環型ライフスタイル』